大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(あ)943号 決定

本店所在地

仙台市立町一番三〇号

株式会社 北杜社

右代表者代表取締役

渡辺篤

右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和四六年三月一五日仙台高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人田利治の上告趣旨のうち、憲法三九条違反をいう点は、原審で主張および判断を経ておらず、その余は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小川信雄 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男)

昭和四六年(あ)第九四三号

被告人 株式会社 北杜社

右代表者代表取締役 渡辺篤

弁護人田利治の上告趣意(昭和四六年六月二日付)

一、 原判決は刑事訴訟法第四〇五条第一号に該当する憲法の違反があり破棄されるべきものと思料する。

衆知の如く最高裁判例は重加算税を課した後法人税法違反の制裁として罰金刑を課することは、前者が制裁たる性質を認め乍ら租税上の措置であるとして二重処罰でなく憲法第三九条に違反しないとするのであるが、重加算税が制裁たることを認め且つ被告人に与えられる負担について考慮する時は、前記最高裁判例は詭弁と云わざるを得ない。こゝに最高裁判所に於て判例変更の勇断を期待するものである。

二、 原判決は量刑不当に重く破棄せざれば著しく正義に反し、刑事訴訟法第四一一条第二号に該当するものと思料する。

量刑不当の理由については控訴趣意書に記載した通りであるので、これをこゝに援用するが、更に原判決は重加算税が前記の如く制裁的意義を有していることを考慮する時、仮にこれ迄の最高裁の重加算税と罰金との関係についての見解を認めるとしても、本件に於ける三五〇万円の罰金刑は、被告人の重加算税の完済の事実について考慮されていないと云わざるを得ない。

よって原判決は刑の量定不当であって破棄さるべきものと思料する。 以上

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